さよなら8GBメモリー。最小16GB時代の足音と立ち塞がる壁
こちらはBusiness Insiderの無料メルマガに掲載されたコラムです。 無料メルマガでは、日替わりで編集部員がコラムを執筆しています。 Tech Insiderの振り返りコラムは、毎週土曜日11時に配信しています。 少し気が早いかもしれませんが。 10月最終週のアップルによるM4ファミリー搭載Mac発表は注目を集めました。三夜連続(日本時間)で行われた発表の中で、特に話題を呼んだのは手のひらサイズの「Mac mini」。その電源ボタンの位置(底面)も含めて、多くの関心を集めました。 連日の発表の締めくくりはプロ向けモデル「MacBook Pro」でしたが、普及モデルの「MacBook Air」にも静かな変更がありました。 それは「価格据え置きで最小構成のメモリーを16GBに増量」というもの。MacBook AirにはM4チップは搭載されていませんが、メモリー容量は新型iMacやMac miniと同等になりました この変更の背景には「オンデバイスAI」があります。つまり、クラウドではなくPC上で動作するAI(アップルの場合は「Apple Intelligence」)です。 他社の動向を見ても、マイクロソフトの最新AI PCブランド「Copilot+PC」では、AI処理用NPUやストレージ容量の基準に加え、「16GB(DDR5/LPDDR5)以上」というメモリー要件があります。 半導体メーカー・インテルも9月に発表したノートPC向けチップセット「インテル Core Ultra プロセッサー Series 2(コードネーム:Lunar Lake)」では、メモリーを統合し、最小構成の「Core Ultra 5 プロセッサー 226V」で16GBを実現しています。 これらの傾向から、ある程度の規模のAI(言語モデル等)をPC上で動作させるには、少なくとも16GBのメモリーが必要だと考えられます。しかし、「これから全てのPCがメモリー16GB搭載になる」という未来が即座に訪れるかというと、疑問が残ります。 現在、家電量販店ではメモリー8GB搭載機が依然として店頭に並んでいます。AI PCの魅力が十分に伝わらない限り、こだわりの少ない一般消費者は「価格優先」で選択するでしょう。 また、税制上の課題も存在します。確定申告の際、原則として取得費用が10万円以上の物品は「固定資産」として扱われ、減価償却(複数年にわたる経費計上)が必要になります。 Macはともかく、AI PCもまだ比較的高価なため、こうした経済環境が変わらない限り、「PC売り場の風景が一変する」には至らないのではないでしょうか。 一人のテック好きとしてはAI PCの魅力の発信を、ビジネスメディアの一員としては技術以外の課題の分析に、取り組んでいきたいと思います。
小林 優多郎